霊山浄土への導き
日蓮は日本第一の法華経の行者也。
日蓮が弟で子檀那等の中に日蓮より後に来り給い候わば、梵天・帝釈・四大天王・閻魔法王の御前にても、日本第一の法華経の行者、日蓮房が弟子檀那なりと名乗って通り給うべし。
此の法華経は三途の河にては船となり、死出の山にては大白牛車となり、冥途にては燈となり、霊山へ参る橋也。
霊山へましまして艮の廊にて尋ねさせ給え、必ず待ち奉るべく候う。
現代語訳
日蓮は日本第一の法華経の行者である。我が弟子信者等の中に私の後から来る者がいたなら、梵天、帝釈天、四天王や閻魔法王等の前で「日本第一の法華経の行者、日蓮御房の弟子信者なり」と名乗って通られるがよい。この法華経は三途の河を渡る時には船となり、死出の旅路では大きな白牛が引く車となり、冥途への道中では燈明となり、霊山浄土へ渡す橋ともなるだろう。霊山へ来られたなら、その入り口である北東の方角(丑寅)の渡口で日蓮をお呼びなされ。必ずそこでお待ちしておるから。
人生最後を迎える時、最も不安なのは「死後自分はどうなるのか」ではないでしょうか。
その時、このように明確に行き先が示されたなら、どんなに大きな安らぎが得られることでしょう。
ただ大聖人の懐へ飛び込んで行けばよいのです。
そのためには日々の信心が肝心です。
身に心に大いにお題目を貯えようではありませんか。
波木井実長
大聖人の最大有力信者で南部実長ともいう。大聖人が晩年九ヶ年過ごされた身延の地領を提供し、給仕につとめた。本書は入滅の六日前に書かれたと伝えられる。ご誕生からご一生を振り返り、最後に波木井殿に謝辞を述べられ、墓を身延に建てること、さらに自身より後から来る弟子信者に霊山浄土で待つことを約束して結ばれている。